あげる。 |
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投げやりになってしまうときがある。 どうでもいいや、とか。 なんでもいいや、とか。 一生懸命それを誤魔化して、自分の中の奥の奥の奥の方に埋め込んで、 そんな自分をなかったことにする。 でも、それにも限界っつーのはあって。 どうしようもなく、寂しいときがある。 藤真さん? 藤真さん? もーしもーし? 聞こえてますかー? 聞こえてんなら、ちゃんと返事して下さいよ! 黙ってろってコトすか? って、電話で黙ってたら意味ないじゃないスかー。 今日、練習試合だったんスけど、神さんが珍しくスリーポイント外して、 って、面白くないスかね、こんな話。 もー、何とか言って下さいよ! やっと話せたと思ったらコレなんだもん。 寂しいじゃないスかー。 受験勉強で忙しいんだろなと思って、俺、電話かけるのこれでも遠慮してたのにさー。 けど、やっぱ、話したいなーと思って。 藤真さん? 今笑ったでしょ。 聞こえたよ、笑ったの。 どしたんスか? 今日、何か、おかしい。 すません、えらそうなこと言って。 何か……おかしいなって、 あ、バカの本能っつーか!野性の勘っつーか! 藤真さん? ホントに……ホントに大丈夫っスか? 駄目だな。 こんな俺は本当に駄目だ。 声を聞いて何になる。 こんな気持ちは誰に解消させられるものではないのに。 馬鹿みたいに底抜けに明るい声。 けれど、それを曇らせているのはまぎれもなく、俺。 心配させるつもりはないんだ。 ただ、俺が、寂しさを、隠し切れないだけで。 藤真さん? 今ね、俺、藤真さんちの坂の下の、電話ボックスからかけてんの。 おうち、行ってもいいスか? 俺、今日は、どうしても藤真さんに会いたいです。 藤真さん、 俺、今日は、どうしても、藤真さんに会わないといけない気がする。 一分で行きます。 玄関の前で、待ってて下さい。 馬鹿な奴。 本能的に、阿呆のように俺のことを感じて。 あぁだからなのかな。 だから俺は。 お前に、 俺を。 |
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